アラーム設定の確認を怠り入院患者が受傷した事故(東京地判令和2年6月4日確定)

消費者安全問題研究会 土庫澄子

1 事故のあらまし

 平成27年3月23日、A(昭和23年生まれ、当時66歳)はくも膜下出血と診断され、動脈瘤性くも膜下出血を前提にSICU(外科系の集中治療室)に入院した。刺激を与えないよう暗室管理とし、鎮静剤の投与ののち、やや興奮気味に話すことがあったので、同日、医療従事者はアラーム音による刺激をさけるため、ベッドサイドモニタのSPO2、APNEA(無呼吸)、呼吸数などのアラームをOFFとした。

 翌24日、B医師はAを同一フロアにあるSHCU(外科系の高度治療室)へ転床する予定とした。C医師はAの転床に備え、バイタルに関し指示を出し直す必要があると考え、SPO2等について指示を行った。

 25日、転床の直前に、看護師はC医師の指示をふまえ、転床先のベッドサイドモニタにおいて、SPO2、APNEA、血圧等のアラーム設定を行い、アラームはONとなった。

 その後、転床元の電子カルテ上で、SICUからSHCUへの「転室・転床」操作が行われ、Mirrel1(急性期患者情報システム)の「ベッド移動」が働き、転床元のアラーム設定が転床先のモニタに上書きされた。これにより、SPO・・・

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