軍拡よりも社会保障の充実を

弁護士(東京) 宇都宮健児

1 安保政策の大転換と軍拡増税

 政府は昨年(2022年)12月16日、政府の外交・安全保障の基本方針を示す「国家安全保障戦略」、日本の防衛力指針を示す「国家防衛戦略」、具体的な装備品の整備と防衛費の総額を定める「防衛力整備計画」の安保関連三文書を閣議決定した。

 安保関連三文書には、これまでわが国の安全保障政策の原則であった「専守防衛戦略」を大きく転換する敵基地攻撃能力(反撃能力)の保有と、2027年度の防衛費を関連予算と合わせて国内総生産(GDP)比2%に当たる約11兆円規模に「倍増」させる方針が明記されている。このような安保政策の大転換が十分な国会審議や国民的議論を欠いたまま進められていることは、「民主主義」の観点から見れば甚だ問題であると言わねばならない。

 敵基地攻撃能力の保有を認めたことで、台湾有事で米中両国の軍事衝突が発生した場合、日本が集団的自衛権を行使して米軍を守るために敵基地を攻撃すれば、日本も戦争に巻き込まれ日本全土が戦場となる危険性がある。

 防衛予算に関しては、2027年度までの5年間で総額43兆円もの巨額の防衛予算を確保し、2027年度の防衛費を国・・・

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