日本の社会保障はどこに向かうべきか
─コロナ対応から普遍的な生活支援へ─

弁護士(滋賀) 土井裕明

コロナ対応の財政出動

 2022年10月29日、クレサラ対協・被連協は毎年恒例の全国被害者交流集会を滋賀県で開催し、標題のシンポジウムを行った。

 政府は、コロナ対策として、医療現場の対応、ワクチンの確保と接種の推進という医療面の施策に加え、市民の行動制限に伴う経済活動の停滞への対策として、大規模な財政出動を実施した。シンポでは、コロナ対応の財政出動を議論の出発点として、一般論としての生活支援の在り方について意見が交わされた。

給付型か貸与型か

 コロナ対策の財政出動には、給付型と貸与型の二つの類型があった。前者の代表はひとり10万円の特別定額給付金の支給、事業者を対象とする持続化給付金の交付といった補助金施策である。後者の例として、生活福祉資金の特例貸付けや、事業者を対象とした各種の貸付けが挙げられる。

 貸与型は投入された資金の償還が予定されるため、給付型に比べて財政負担は小さい。しかし、償還の負担を心配して、貸与の申込みを躊躇する人が出てくる。経済的に窮地にある人ほど、将来の償還負担を懸念して制度の利用をためらうことになりかねない。こうなると、本来の目的を果たせないおそれが・・・

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