関西大学法科大学院教授 多治川卓朗
2008年のヤミ金最高裁判決(最判平成20年6月10日民集62巻6号1488頁)は、ヤミ金融業者から取立てを受けた借主の事後救済として、著しく高利による貸付けが反倫理的行為に該当することを理由に、借主のヤミ金融業者に対する損害賠償請求を認容した。具体的には、ヤミ金融業者から融資を受けた借主は、高利の利息の返済義務がないだけでなく(民90条または利息制限法等)、元本の返済義務もない(不法原因給付、民708条)。したがって、取立てを受けた借主は、ヤミ金融業者に対して元本と利息の返還を請求できる(不法行為に基づく損害賠償、民709条)、とされた。
この時期から、ヤミ金融は事業形態を偽装する方向に向かう。すなわち、ヤミ金融業者が、金銭消費貸借という法形式により著しく高利の融資を行えば、貸金業法違反や出資法違反により刑事処罰の対象となる。更に、ヤミ金最高裁判決が確立したルールにより、著しく高利の融資による借主は利息と元本の両方につき返済義務を負わない。それゆえ、金銭消費貸借とは別の法形式を用いることで、ヤミ金融業者が融資を実現しようと試みることになる。これがヤミ金・・・
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