住み続ける権利の侵害、法改正の必要性

弁護士(大阪) 植田勝博

1 「住み続ける権利」が侵害される事件

(1)阪急岡町駅から徒歩5分のところに、古い高級な借家建物が多数あった。

 阪急阪神不動産がその一画の開発に着手をして地上げが進められた。残った3軒の内、お一人は佐々木氏であった。家族は奥さんと娘さんの三人で、自宅にお会いして打合せのときは、自身の福岡出身でエリートの教育を受けて、戦後、大会社に勤め、子会社の社長、関連会社の役員などをして72歳まで働かれた。

 終の棲家と考えていた借家は、天井の高い風格のある洋室もあり、仏壇、テーブル他、会社の勤務時代にいろんな所から貰ったり購入した物品類があり、庭には愛猫のお墓があり、朝は仏壇でお経を上げて、庭の愛猫にお経を上げて、近所の病院に通院、散歩をする生活がされていた。

 2022年1月に立退料をもって明渡しの和解をし、2022年3月14日に高齢者サービス付き住宅に転居された。

 2ヶ月後の2022年5月20日に死去された。93歳であった。

 娘さんからの報告では、調停、裁判では、佐々木氏は、裁判による圧迫感と緊張感の生活、被告の地位に立たされたことへの屈辱感や悔しさ。徐々に諦めざるをえない気持ちとな・・・

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