第5章 証券・金融商品

弁護士(大阪) 古川幸伯

第1 はじめに

 今回は、①仕組債・株式につき適合性原則違反・過当取引が肯定された一審判決と、②有価証券届出書虚偽記載につき、主幹事証券会社の賠償責任を肯定した最高裁判決を紹介する。

第2 裁判例

1 大阪地方裁判所令和2年1月31日判決〔2〕(仕組債・株式、適合性原則違反・過当取引、過失相殺2〜6割)

(1)事案は、対象となる一連の取引が開始された当時、原告A(70歳の母親)と原告B(43歳の長女)の女性顧客らが、それぞれ、仕組債、投資信託、外国株、株式信用取引等に関し、適合性原則違反、説明義務違反、過当取引等の不法行為に基づく損害賠償請求を行ったものである。

 判決の認定によれば、原告Aは、高校卒業後、K産業に入社し、3年間事務職で勤務した後、職場結婚して退社し、以後は専業主婦をしていたが、昭和63年5月、亡夫から相続したK産業14万3000株、イオン100株を保有するほか、自宅土地建物も所有していた。上記取引開始当時の収入は、亡夫の遺族年金(年間約180万円)及び上記株式の配当等であり、平成25年当時、約1000万円の預金を保有していたものである。同じく判決の認定によれ・・・

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